娘の結婚



 娘が結婚という第二の人生の門出に、手作りの結婚披露宴を鎌倉で挙げた。鶴岡八幡宮の暮れゆく境内での結婚式。篝火(かがりび)と神楽(かぐら)の中で満足そうな娘の表情。鎌倉の町には、就職して横浜に出てから時々訪れていたらしい。鎌倉が好きな父親の影響もある。北海道にはない、遠い古来からの日本の歴史を感じる町だ。娘は北海道の風土も好きだと言っているので、直に戻ってくるという淡い期待を僕は抱いているが、妻の方は必ずしもそうではなく、娘が独り立ちしたという安堵感の方が強いようだ。
 久しぶりに鎌倉の町を散策してみると、心の中に流れ込んでくる、言葉を要しない歴史が、たまらないくらいの懐かしさをもって僕を虜にしてしまいそうになる。日本人であるが故の懐かしさだろうか。今住んでいる小樽の町にも歴史はあるが、あまりにも言葉を必要とする。もしかしたら、耳を塞いでしまうと何も感じないかもしれない。
  もう一人の娘。僕の影響だとも気づかずにスペイン好きになってしまい、自分はグラナダで結婚式だ、と騒ぎ出している。