雨の日



 窓から外を眺める。雨の日。ガラスを流れる雨の滴。傘をさし、レインコート姿で人々が時折行き交う。母も夕方の買い物に出かける。僕も時には一緒について行くこともあった。その頃は道が悪かったから、雨の日は必ずゴム長靴を履いて外に出た。歩き方が乱暴だった僕は泥水をはねてズボンを汚し、よく母に叱られたものだった。
 車は少なかった時代だ。雨の日は本当に静かで、世の中は静まりかえっていた。流れる雨滴の陰から近所の仲良しが傘をさして、外に出る姿がみえる。姿からそれが近所の店への買い物だと分かる。直に帰ってくる。時計を見る。まだ雨が止んだら近くの広場で遊ぶことが出来る時間だ。空は少しばかり明るくなっている。ふと向かいの家の窓から、やはり仲良しの女の子がこちらを見ているのに気づく。
 雨の日。それは快晴の日に対して憧れを抱く日でもあった。外を眺めながら憧れを抱いたから、決して暗い日ではなかった。雨が上がるのを心待ちにしながら外を眺める。少しでも雨が止んだらゴム長靴を履いて外に飛びだし、仲良しが現れるのを待った。集まる仲良しの数で遊びは変わった。雨の日。それは感性が育まれる日でもあった。