新居
          
 我が家は妻と四匹の犬達、ときおり帰ってくる娘達のための新居に変わった。犬達専用の部屋はないが、彼らにはウッドデッキと広い庭を用意した。せっかくの新居なのだからと、大きめの柔らかい革製のソファーと、分厚い一枚板の食卓テーブルを自分達のために新調した。階段も老後のことを考え、段差を低くし、途中に半畳ほどの踊り場を設けた。
 この暑い夏、犬達は吹き抜けの階段の踊り場で横になったり、以前よりも格段に広くなった玄関ホールで涼んだり、2階のベランダから往来を散歩する仲間達に、挨拶の吠え声を上げる。昼間は大きいソファーの上に仲良く横になり、時には食卓テーブルの上に並んだ食事を、背の高い長女が勝手に食べる。
 さて、当の主はとなると、座ったまま全てができる「神田川」的生活から、書類や本を探すのも、CDを取り出すのも、妻を呼ぶのにも、歩き回ったり、階段を上下しなければならない生活に変わった。精神が集中できない。内心、あの「神田川」的生活が自分には向いていると、時々思うが口には出せない。今夜もすでに階下から長男が上がってきて、新調した大きなベッドの上に横になっている。少なくとも新居は、彼等にとって自由な空間を広げたことは事実である。