夢
太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ
僕は正月になるといつも三好達治のこの短い詩を思い出す。真夜中にしんしんと空から舞い降りる雪片。それは太郎の夢を誘う。朝ふりつもった雪の中で、太郎が、次郎が雪まみれになってポチと一緒に遊ぶ光景。その光景はどんな大人にとっても微笑ましいはずだ。北国の子供たちにとって、空から舞い降りてくる雪は夢を誘った。
僕はこの詩を読むと、すごく懐かしく感じ、そして舞い降りる雪片を生活の中で見失っている自分に気づく。生活全体が変化してしまい、僕は寒さを厭い、滑る路面を避けるようになってしまった。
我が家で空から舞い降りる雪片に目を輝かし、庭で走り回る四匹の犬たち。足や腹に雪玉をつけて家に入ってきてストーブの側に。じきに辺りは水だらけになり、妻に叱られて風呂場に向かう。でも風呂場から出てくるとすぐに庭へ飛び出す。慌てたような妻のしかり声。ふと子供の頃の母の声を思い出す。今年こそ犬たちと一緒に夢を追いたい。夢の素材は周囲にいくらでもあるはず。素材に気がつかなくなってゆく自分の感性を、三好達治の詩と犬たちが蘇らさせてくれたようだ。